前回、私のiDeCoの残高が712万円になっていた話を書きました。あの記事は、最後にこんな疑問を残したまま終わっていました。
「受取時の税金……結局いくらになるの?」
正直に言うと、私が実際に受け取るのはまだ15年以上も先の話です。それでも調べてみて分かったのは、iDeCoは「どう受け取るか」で手取りが何十万円も変わるということ。しかも2026年から、その受け取り方に関わる大きな改正が始まりました。
受け取りの直前にあわてて勉強しても、打てる手はほとんど残っていません。だからこそ、まだ遠い今のうちに「出口」を整理しておこうと思います。
※この記事は我が家の体験と方針をまとめたものです。特定の商品や受け取り方をおすすめするものではありません。税制は改正されることがあり、控除額や税額は加入年数・他の所得・お勤め先の制度によって変わります。実際の手続きや正確な試算は、運営管理機関・お勤め先・税務署や税理士などの公式な情報で必ずご確認ください。
iDeCoは「貯めるとき」より「出口」で差がつく
iDeCoは、積み立てている間は運用益が非課税で、掛金も全額所得控除になります。ここまでは多くの人が知っているメリットです。
ただ、ずっと無税というわけではなく、受け取るときにまとめて課税のタイミングがやってきます。前回の記事で「iDeCoは税金の後払い」と書いたのは、まさにこの出口のことです。
そして救いなのが、受け取り時にはとても大きな控除が用意されていること。この控除をうまく使えるかどうかで、最終的な手取りが大きく変わります。「貯め方」ばかり注目されがちですが、本当の勝負どころは出口にあります。
iDeCoの受け取り方は3つある
iDeCoの受け取り方は、大きく分けて次の3パターンです。受け取りを始める時期も、原則60歳〜75歳の間で自分の好きなタイミングを選べます。
- ① 一時金(一括)……全額をまとめて受け取る。「退職所得控除」が使える
- ② 年金(分割)……5〜20年などに分けて受け取る。「公的年金等控除」が使える
- ③ 併用……一部を一時金、残りを年金で受け取る折衷案
「どれが一番得か」は人によって変わります。ひとつずつ見ていきます。
①一時金で受け取る|「退職所得控除」が強力
一時金で受け取ると、iDeCoは退職金と同じ「退職所得」として扱われ、退職所得控除という大きな枠が使えます。控除額は加入年数(掛金を出していた期間)で決まります。
- 加入20年以下:40万円 × 加入年数(最低80万円)
- 加入20年超:800万円 + 70万円 ×(加入年数 − 20年)
たとえば30年間加入していれば、控除額は「800万 + 70万×10年 = 1,500万円」。ここまでは税金がかからない計算です。さらに、控除を超えた分もその半分(2分の1)だけが課税対象になり、他の所得と分けて計算されます。とにかく一時金は優遇が手厚いのが特徴です。
私のように残高が700万円台で、加入年数も長くなりそうなら、一時金ならまるまる控除に収まって税金ゼロ、というケースも十分あり得ます。…ただし、ここに大きな落とし穴があります(後半で詳しく書きます)。
②年金で受け取る|控除はあるが手数料に注意
年金として5〜20年などに分割で受け取る場合は、公的年金等控除が使えます。国民年金や厚生年金と合算したうえで、一定額までは控除されるしくみです(65歳以上なら年間110万円までなど)。
ただ、年金受け取りには気をつけたい点が2つあります。
- 公的年金と合算される……国民年金・厚生年金とまとめて課税されるため、人によっては課税対象が増えたり、社会保険料に響いたりする
- 受け取っている間ずっと手数料がかかる……iDeCoは給付のたびに手数料が引かれ、口座管理料も発生する。長く分割するほど積み重なる
一方で、一時金で一気に課税されるのを避けて、所得を平準化できるのは年金受け取りの強みです。退職後の収入が少ない時期にうまく重ねれば、有利になる場合もあります。
③併用|いいとこ取りの折衷案
意外と知られていませんが、「一部を一時金、残りを年金」という併用もできます(運営管理機関によります)。
たとえば、退職所得控除に収まる金額までを一時金で受け取り、はみ出る分だけを年金で薄く受け取るといった調整ができます。控除の枠を無駄なく使い切りたい人にとっては、現実的な選択肢になります。
【2026年改正】退職金がある人は「10年ルール」に注意
ここが今回いちばん書きたかったところです。一時金の退職所得控除はとても強力ですが、会社の退職金も同じ「退職所得控除」を使うという点が落とし穴になります。近い時期に両方を受け取ると、控除が重複しているとみなされ、調整(減額)されてしまうのです。
これを避けるために、受け取る時期をずらす「ルール」があります。そして2026年1月から、このルールが厳しくなりました。
- iDeCoを先に → 会社の退職金を後で受け取る場合……これまでは5年空ければ両方とも控除を満額使えました(旧「5年ルール」)。2026年1月以降は、これが10年に延長されます(「10年ルール」)。10年空けないと、退職金側の控除が減らされます。
- 会社の退職金を先に → iDeCoを後で受け取る場合……こちらは従来どおり20年空ける必要があります(今回は変更なし)。
つまり、「60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で会社の退職金を受け取る」という、これまでなら問題なかった典型的なプランが、2026年以降は控除の取りこぼし=増税につながり得るということです。退職金がある人ほど、受け取りの順番とタイミングが手取りを左右します。
ざっくり覚えておくこと
「iDeCo一時金 → 退職金」は10年、「退職金 → iDeCo一時金」は20年空けると、それぞれの控除を活かしやすい。退職金がある人は、受け取る順番と年齢を早めに確認しておく。
まだ先だけど、我が家が今から意識していること
受け取りまで15年以上ある私が、それでも今のうちにやっておこうと思っているのは次のことです。
- 会社の退職金の有無・受け取り時期を把握しておく……順番とタイミングが効いてくるので、まずは「自分に退職金があるのか・いつ・いくら」を知っておく
- 受け取り開始は60〜75歳で選べることを忘れない……運用を続けながら、退職金とぶつからない年に寄せる、という調整余地がある
- 出口が近づいたら、値動きと受け取り方をセットで考える……我が家のiDeCoは現在100%オルカン。受け取り直前の暴落に当たらないよう、数年かけて受け取り方を決めるつもり
正直なところ、15年も先の税制はまた変わるかもしれません。だから今の私にできるのは「今すぐ完璧な最適解を出すこと」ではなく、「出口で損をする仕組みがある、と知っておくこと」。それだけで、いざというときに打てる手がまったく変わってきます。
まとめ
- iDeCoは受け取り方(一時金/年金/併用)で手取りが大きく変わる
- 一時金=退職所得控除が強力。年金=公的年金等控除が使えるが手数料に注意
- 2026年から「10年ルール」。退職金がある人はiDeCoとの受け取り時期に要注意
- まだ先でも「出口の存在」を知っておくだけで、将来打てる手が変わる
iDeCoそのものの実力(後払い節税の中身)については、残高712万円で実際に計算してみた前回の記事で詳しく書いています。あわせてどうぞ。
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