以前、投資をめぐる「嫁ブロック」を時間をかけて突破した話を書きました。プレゼン資料を妻に改ざんされ、最後のスライドに赤ちゃんの写真と「でもママが投資はリスクもあるって言ってた」と入れられた、あの事件です。
あれから数年。投資についてはもう、妻は何も言いません。むしろ優待が届けば喜んでいます。第一の嫁ブロックは、たしかに解除されたのです。
ところが——です。私の中に新しい目標が芽生えました。FIRE。経済的自立と、早期リタイア。これを口にしたとたん、妻の眉がまた少し動いたのです。そう、私はいま、第二の嫁ブロックに直面しています。
※この記事は我が家の体験と、夫婦の価値観の話です。投資や早期リタイアを勧めるものではありません。お金の話には個人差があり、正解はひとつではありません。
投資はOK、でも「会社を辞める」はダメ
正確に言うと、妻はFIREに「反対」というより「慎重」です。頭ごなしにダメと言うわけではない。でも、私が「いつか会社を辞めて…」と言いかけると、決まってこう返ってきます。
「仕事を辞めたら、ボケるよ」
これ、笑い話のようでいて、妻なりの本音だと思うのです。投資はお金が増える話。でもFIREは、夫が会社という居場所を手放す話。妻にとっては、意味合いがまるで違うのでしょう。
妻が反対する理由を、勝手に推察してみた
ここで、妻の気持ちを勝手に想像してみます(本人には聞いていません。聞くのが少し怖いので)。
我が家は、家計管理は私の担当です。資産がいくらあるかは妻にも報告していますが、妻は細かくは把握していません。たぶん4%ルールも、取り崩しシミュレーションも知らないと思います。
つまり妻からすると、「よくわからないけど、夫がなんか会社を辞めると言っている」状態なんですよね。これ、冷静に考えたら不安で当たり前です。
しかも妻の不安は、たぶんお金そのものじゃない。
- 毎月決まって入ってきた給料が、ある日止まること
- 夫が社会との接点を失って、家でダラダラし始めること(=ボケる説)
- 「いくら資産が増えても、この先何が起きるか分からない」という、漠然とした未来への不安
数字をいくら見せても、この不安は消えません。なぜならこれは計算の問題ではなく、感情の問題だから。
そして気づくのです。これ、投資のときの嫁ブロックと、根っこは同じだ、と。妻はただ、家族のこれからを守りたいだけなんですよね。
念のため言っておくと、私は仕事が嫌いなわけじゃない
ここ、誤解されたくないので強めに書きます。
私は、仕事がイヤでFIREしたいわけではありません。人間関係に大きな不満があるわけでもないし、毎月の給料には本当に感謝しています。会社員という立場の安心感も、よく分かっているつもりです。
じゃあ何が不満なんだ、と。贅沢な悩みに聞こえるかもしれません。でも、子育て世代のパパなら、たぶん分かってもらえると思うのです。
そして、ここが私のFIRE観の核心なのですが——私が欲しいのは「二度と働かない権利」ではなく、「時間と場所を自分で決める権利」なのです。
それでも私がFIREを目指す理由=「時間」と「場所」
もう少し具体的に書きます。私が欲しい自由とは、たとえばこういうことです。
- 子どもが風邪をひいたとき、会社に謝りながら休まなくていい
- 平日に、子どもとどこかへ遊びに行ける
- 授業参観や運動会のたびに、仕事の調整で頭を悩ませなくていい
- 副業の時間を、自分の裁量で確保できる
- 朝、ジムに行ける
- 混んでいない平日に、買い物を済ませられる
どれも、ささやかな願いです。でも会社員をやっていると、この「ささやか」が驚くほど手に入らない。時間と場所を、会社に握られているからです。
私が目指すのは「完全リタイア」ではない
だからFIREといっても、私が目指しているのは完全リタイア(一生働かない)ではありません。
働くこと自体はいい。むしろ少しは働いていたい。ただ、その働き方を自分で選びたい。だから私が想定しているのは、バリスタFIREやサイドFIREのような“ゆるい”形です。資産からの取り崩しに、好きな仕事の収入を少し足す。完全に辞めるのではなく、いつでも辞められる状態で、好きなように働く。
これなら「ボケる」心配もない。むしろ、社会との接点は自分で選んで持ち続けられます。…と、妻に説明したいのですが、まだうまく伝わっていません。
だからこれは、対立じゃなくて「すり合わせ」
投資の嫁ブロックを思い出します。あのときも、私は妻を論破したわけじゃありませんでした。プレゼンは改ざんされて惨敗したけれど(笑)、そこから少額で始めて、優待で妻を巻き込んで、時間をかけて「あ、意外と大丈夫かも」と思ってもらった。突破したんじゃなく、理解してもらったんです。
FIREも、たぶん同じです。妻の不安は正しい。私の願いも、正しい。どちらかが間違っているわけじゃない。だったら、勝ち負けじゃなくて、すり合わせでいくしかない。
バリスタFIREという落としどころを、優待のときみたいに、少しずつ見せていく。「完全に辞めるわけじゃないよ」「むしろ家族との時間が増えるよ」と。きっと何年かかかります。でも、急がなくていい。投資と同じで、時間は味方ですから。
だから私は、まだ会社員を続けています。妻を説得できていないからではありません。まだ家族みんなが納得する形が見つかっていないからです。
そして願わくば、この記事を妻にも読んでほしいと思っています。
……たぶん読まないけど(笑)
